地方債

資産運用は初めてという人でもチャレンジしやすい安全な投資として注目を集めている地方債についてリサーチしてみました。地方債ならではのメリットとともに、注意しておきたいデメリットについて説明します。

初心者でも安全な資産運用・地方債について

一般財団法人地方債協会 地方債とは
画像引用元:一般財団法人地方債協会 地方債とは
http://www.chihousai.or.jp/02/01.html

「地方債」とは、都道府県や政令都市などの地方自治体が発行する債券のことです。

発行元の信用度が高いため安心安全な債券とされており、発行して収集したお金は生活インフラや都道府県の事業、公共施設に関することなどに使われています。

どのような地方債がどのタイミングで発行されるのかはそれぞれの地方自治体によって異なるため、地方債で資産運用する場合は該当の都道府県や政令市のサイトのほか、財団法人「地方債協会」のサイトなどで近日発行予定の地方債の発行条件や金利をチェックする必要があります。

地方債の種類

地方債の申込単位は一般的に10万円で、償還期間は10年に設定されているものが多いのですが、最近は地方債の形の多様化が進んでおり、申込単位が1万円のものも増えてきました。

そのぶん気軽に購入できるようになり、比較的買いやすい投資商品といえます。地方債にはいろいろな種類がありますが、大きくわけると4つに分類されます。

全国型市場公募地方債(個別債)

各地方自治体が単独で発行する債券のことです。発行頻度は不定期で、償還年限も5年満期~10年満期、中には10年超に設定されているなどさまざまです。

銘柄名としては「第○回公募公債」となっているものが多く、誰でも購入することが可能です。

住民参加型市場公募地方債

いろいろな都道府県および市区町村が発行する債券で、別名「ミニ公募債」とも呼ばれています。

主目的は必要資金の調達にありますが、名前の通り、都道府県や市区町村の住民の行政参加意識を高めることも目的のひとつに掲げています。

そのため、個別債に比べると資金使途が明確に示されていることが多い傾向にあるのが特徴です。

また、市区町村を発行元とするケースではより地域に密着した発行を行っており、発行元によっては販売地域に一定の制限を設けているところもあります。

地域色が強いせいか銘柄名も多種多様で、「県民債」「市民債」という名称が用いられたり、オリジナルのネーミングをつけているケースもあります。

発行頻度は不定期で、3~7年満期が中心。購入対象者の基準にはばらつきがありますが、発行する都道府県および市区町村に居住または勤務している個人や、その地を拠点としている団体などを対象としているパターンが大半を占めています。

共同発行市場公募地方債

複数の地方公共団体が共同発行する債券のことです。

たとえば平成30年土は24の道府県と12の政令指定都市が共同で発行し、その債権は36団体の連帯債務となります。

他の地方債が各々の地方公共団体に委ねられているのに対し、複数の地方公共団体が連名で発行する形になるため、銘柄の名称は「第回○共同発行市場公募地方債」で統一されていますし、償還年限も10年満期。発行頻度も毎月と条件がある程度固定されています。誰でも購入OKです。

銀行等引受債

地方公共団体が地元の金融機関を対象に発行する債券のことです。元々「縁故地方債」と呼ばれていましたが、2003年度に「銀行等引受債」という名称になりました。

「銀行」という名称ではありますが、債券を発行する対象によってさらに3つに区分され、銀行や保険会社を対象とした「銀行等縁故債」のほかに、地方共済組合などを対象とした「共済等縁故債」、地元企業を対象とした「会社等縁故債」など、銀行以外を対象とした地方債も発行されています。

特定の業種においてはよく知られた地方債ですが、保有者が特定の者に偏っていること。発行団体が多い上、発行額も小さい銘柄が大半を占めていることなどから、一般的に見ると個別債より知名度はかなり低い傾向にあります。

当然ながら流動性も低く、個人投資家にとってはほとんどなじみのない地方債といえるでしょう。

地方債の魅力とリスク

地方債の魅力とリスク

地方債には国債にはないさまざまな魅力やメリットがありますが、一方でデメリットやリスクもいくつか存在します。

いくら安全性が高いと言っても投資商品であることに変わりはありませんので、資産運用先として選ぶ場合はメリットと一緒にデメリットもしっかり学んでおきましょう。

地方債の魅力とメリット

地方債で資産運用する一番の魅力は、なんと言っても高めの金利でしょう。

利率は発行元の地方公共団体によって異なりますが、大半の場合、銀行の定期預金金利や国債の金利等と比べて高い利率を誇っています。

特に財政面にネックを抱える地方公共団体が発行する債券は、独自の魅力を出さないとなかなか買い手がつかないため、金利が高めに設定されているケースが目立つようです。

たとえば平成30年度の例を見ると、国債の第98回債は10年満期で表面利率が年0.05%であるのに対し、平成30年5月債の10年満期地方債は最も利率が低いものでも0.178%。最も高いものになると0.205%となっています。

同じ10年債でこれだけの開きがあるのであれば、地方債の方が資産運用としてのメリットは大きいと言えるでしょう。

また、個人向け国債と条件は重なりますが、1万円単位から申し込めることや国債に次いで安全性が高く、投資初心者でも取っつきやすいところも魅力的なポイントとなります。

さらに地方債は発行元の規模が小さいぶん、地域に密着してるという特徴があります。

特に住民参加型市場公募債の場合、発行の対象を居住者などに絞った上で資金使途を明確にしているものが多いことから、投資者は「地元に貢献できる」というプラスアルファのメリットを実感できます。

自分が投資したお金が、「どこでどんな風に使われるのか」ということを把握できるのも、地方債ならではの特徴と言えるでしょう。

地方債のリスクとデメリット

地方債のデメリットは、地方自治体の破たんリスクがあることです。

地方債は国債に次いで信頼性と安全性の高い債券であると説明しましたが、同じ日本の地方自治体であっても財政状況は地方自治体によってさまざまで、中には財政難に苦しんでいるところもあるからです。

実際、2007年に北海道夕張市が破たんした時の衝撃は記憶に新しいところでしょう。

もし投資した債券の発行元の自治体が破たんしてしまった場合、購入した地方債の元本が戻ってくる可能性はかなり低いと言えます。そのため、地方債で資産運用する際は投資先の自治体の財務状況をきちんとチェックする必要があるでしょう。

また、地方債は発行後、リアルタイムに取引されるため、市場の金利水準の変化によって金利が左右されます。

地方債は種類にかかわらず中途売却が可能なのですが、もし償還日前に換金する場合は市場価格での売却となるので、その時点で買値を下回っていると損をしてしまうおそれがあります。

さらに市場環境の変動によって流動性が著しく低下している場合は、売却することすら叶わなくなる可能性があるため注意が必要です。

リスクを避けるには償還日まで売却しないのがポイントとなりますが、地方債の償還期間は5年または10年と比較的長めに設定されているので、もし地方債で資産運用するのであれば、すぐに使用する予定のないお金を投資資金に充てることをおすすめします。